研究紹介


 近年,計算機の普及に伴い,計算機を用いて現実問題を解決するためのシステムの開発が盛んに行われている.しかし,現実問題の中には厳密なモデル化および解決のための知識を計算機上に実装することが困難なものがある.こうした問題に対しては,システムとユーザが対話的に処理を行うシステムが有効である.

 領域知識が不十分である問題を解く枠組みとして,事例ベース推論(Case-Based Reasoning:CBR)が注目されている.CBRは,与えられた問題に類似する過去の事例を利用して解を導く問題解決方式である.ユーザとの対話から得られる知識を事例として利用できるため,対話型システムにCBRを取り入れることが有効であると考えられる.

 本研究では,事例を用いた対話型問題解決システムの開発を行う.開発するシステムは,計算機上に表現することが困難な知識をユーザとの対話から事例として獲得する.さらに,獲得した事例を以後の問題解決過程に利用することにより,効率的な問題解決を実現する.

 また,対象問題として,日本語の点字翻訳問題および室内レイアウト変更計画問題を扱う.日本語の点字翻訳問題は,分類問題である.この問題を解決するための規則(ルール)は曖昧であるため,事例を補完的に利用することにより,問題をより正確に解くことができると考えられる.一方,レイアウト変更計画問題は,組合せ探索問題である.解の探索に膨大な時間がかかるため,事例を利用することにより計算量を節約し探索効率を向上させることが考えられる.本研究では,これらの問題を扱うことにより,タイプの異なる問題に対する事例の有効性を示すとともに,ルールベース推論とCBRとを併用する手法および探索とCBRとを併用する手法の有効性を示す.


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